去年の春先、ちいさなクモが家の中の観葉植物に巣をはった。
その巣は本当にクモなんかな?と疑うほど下手で、びろーんと下に垂れたり、
毛玉みたいなものがいろんな植物にくっいたりしていた。
いろんな場所に巣をはっては、のけられ、のイタチごっこになるので、
ある日、「この植物にはるのはオッケー!他の所にはったらのけるよ。」
とお願いしてみた。
嘘みたいだけれど、それ以来その植物にしか巣をはらなくなった。
相変わらず、もじゃもじゃの巣だけれど、可愛らしくて、
サイモントという名前をつけた。
葉水をすると、ひゃあ!となり、夏には巣づくりもまぁまぁ上手になっていた。
秋の終わりになると虫が減って寒くなってきたせいか、動きがにぶくなってきた。
上手になったとは言え、この巣じゃあ餌をとるのはきびしいだろうなぁ。
冬が始まる頃、いよいよ不安になった私は旦那に相談すると、
もう、生餌作戦しかない!ということになり、
家族総出で外の壁にくっついた小さな虫を捕まえては巣にひっつけるという
恐ろしいことをしていた。
年が明けて、その餌も食べなくなり
サイモントは小さくなって巣にくるまって息をひきとった。
サイモントの亡骸はその観葉植物の中に埋めて、巣はそのままにして、
この植物をもっともっと可愛がろうと思った。
今年も、春の気配がやってきた。
サイモントの植物は元気になって、
サイモントみたいに足を大きく広げた新しい芽を出した。
今度は大きくなったね、と話しかけてみる。
2022年4月1日